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目の病気Q&A/糖尿病性網膜症の原因・症状・治療【眼科専門医が解説】
糖尿病性網膜症の原因・症状・治療【眼科専門医が解説】
糖尿病の合併症の1つです
糖尿病に伴う高血糖が持続することで、網膜にある血管がダメージを受け、モヤがかかったような視界(霧視)、視界で蚊が飛んでいるように見える(飛蚊症)、ものが見えにくくなる(視力低下)といった症状をきたします。
この病気は糖尿病にかかっている期間と密接に関係しており、糖尿病を無治療で放置した場合、7~10年で約50%、15~20年以上で約90%以上の人に発症します。糖尿病患者さんは適切な血糖コントロールと眼科医療によって発症と進行を防ぐことができるとされていますが、初期の段階では自覚症状が全くないので、眼科を受診しないことが問題となっています。
この患者さんは全国で約150万人いるとされており、成人の視覚障害の原因の第3位となっています。
原因は?
糖尿病網膜症の原因は、高血糖が持続することによって起こる網膜にある血管の障害です。糖尿病にかかっている人が血糖コントロールができていない状態で、眼科を受診せずに数年間無治療でいた場合に発症します。
眼の網膜にある毛細血管は高血糖状態によってこぶ(瘤)ができたり、出血したり、あるいは血栓などで閉塞することで網膜剥離を起こします。これらの原因により、霧視、飛蚊症、視力低下などの症状をきたします。
糖尿病網膜症の症状
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初期は症状はありません
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モヤがかかったような視界(霧視)
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視界で蚊が飛んでいるように見える(飛蚊症)
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ものが見えにくくなる(視力低下)
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突然の視力低下(網膜剥離)
検査・診断・進行度分類は?
眼底検査と呼ばれる検査で、目の奥にある網膜の状態を確認します。糖尿病網膜症の初期段階である「単純網膜症」では毛細血管瘤、網膜出血、網膜浮腫、硬性白斑などの所見がみられます。
単純網膜症が進行し、「増殖前網膜症」になると軟性白斑、網膜内細小血管異常、静脈異常がみられます。
さらに進行した「増殖網膜症」になると、びまん性浮腫、硝子体出血、網膜/乳頭上新生血管、牽引性網膜剥離、線維血管性増殖膜といった所見がみられます。
進行度は、いくつか複数の分類が存在しますが、わが国で一般にも広く用いられている分類は、Davis分類です。
治療内容
治療の基本は、HbA1cを7%未満とする
血糖コントロールによる病気の進展予防です。
糖尿病の血糖コントロールに加え、糖尿病網膜症の各段階に応じた治療を行っていきます。糖尿病網膜症の第二段階である、「増殖前網膜症」では、血糖コントロールに加え、光凝固療法と呼ばれる治療を行います。これは、網膜にレーザーで光照射を行うことにより、網膜での血管新生を抑制し、網膜症の悪化を防ぐ治療です。
網膜剥離や硝子体出血がある第三段階の「増殖網膜症」では、血糖コントロールと光凝固療法に加え、硝子体手術を行う場合があります。
硝子体手術では出血によって濁った硝子体や、網膜剥離の原因となっている増殖膜を除去します。さらに、これらに加え黄斑浮腫を生じた場合は、ステロイド薬眼局所注射、VEGF阻害薬硝子体内注射などの薬物療法の治療も行っていきます。
治療法1
血糖コントロールによる病気の進展予防
治療の基本は、HbA1cを7%未満とする
血糖コントロールによる病気の進展予防です。
治療法2
光凝固療法
血管透過性の充進した毛細血管揃が局所的に多発すると局所性浮腫が生じるが.経過とともに浮腫の辺縁から輪状に硬性白斑が沈着するようになるこれを輪状網膜症と呼ぶこれは浮腫の範囲を大雑把に示す所見であり.その拡大に伴う黄斑への障害を軽減するために,毛細血管瘤への直接凝固を行う.また,びまん性浮腫に対しては,網膜色素上皮の破壊を狙った格子状凝固を行うが.治療効果に限界があり,機序に関する理論も明らかでないことから,近年では硝子体手術やステロイド局所投与が治療の新たな選択肢となっています
治療法3
硝子体手術
後部硝子体皮質は,後部硝子体皮質前ポケット、の後壁にあたる膜様構造であり,その収縮はあたかも弓(眼球のカーブ)の弧が弦になるような変化で,後部硝子体皮質と癒着の強い中心窩には牽引がかかる後部硝子体皮質の収縮は.透過性の充進した血管から漏出するさまざまなサイトカインによって引き起こされると考えられている.中心窩への硝子体牽引を解除するため.手術により後部硝子体剥離を人工的に作製するまた.このような物理的・機械的なメカニズムだけでなく後部硝子体が網膜浮腫を増悪させる生化学的なメカニズムもある.黄斑浮腫は前増殖期にしばしば著明に増悪するが虚血網膜より産生されたVEGFは後部硝子体皮質前ポケットに高濃度に貯留し、また後部硝子体皮質の細胞外基質に結合して保持される.したがって硝子体手術には,炎症性サイトカインの貯蔵庫としての後部硝子体の榊造を除去する意味もある.
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治療法3
薬物療法
ステロイド薬としては.トリアムシノロンアチノンセドが硝子体やTenon嚢下へ局所投与されているVEGF
を含めてさまざまな起炎物質を抑制することで血管透過性を改諜させることが作用機序と考えられている。効果は、光干渉断層計により容易に効果が判定でき,網膜厚の軽減に対して即効性があるものの、数カ月程度の一過性でありリバウンドがしばしば問題になる副作用としては,ステロイドー般に見られる眼圧上昇があり,ステロイドレスポンダーには禁忌である.繰り返し投与すると易感染性から細菌性眼内炎のリスクが高まり,また網膜色素上皮への毒性も懸念さるため.遷延・再発例には硝子体手術を選択すべきだと考えています。
VEGF阻害薬による黄斑浮腫に対する治療は.わが国では臨床試験中ですが,アメリカの臨床試験では網膜厚の減少と視力の向上につき良好な成績が報告されています。また.増殖網膜症において血管新生の退縮効果も認められたことから,VEGFによる炎症・血管新生を抑制できる新薬として注目されている抗炎症ステロイド薬のような眼圧上昇,易感染性などの副作用は見られませんが.糖尿病網膜症という慢性疾患に対し反復投与をいつまで続けるのかという問題は解決されておらず,また長期経過には不明です。
参考文献・根拠
ここに引用する文を書きます。
Q&A
Q 糖尿病と診断されました。どのくらいの頻度で眼科を受診した方がいいでしょうか?
糖尿病網膜症の各段階や症状の程度によって異なってきますが、おおよその目安は次のとおりです。
病期 | 通院頻度 |
糖尿病と診断されたら(糖尿病網膜症未発症) | 1年に1回程度 |
単純網膜症 | 3~6か月に1回程度 |
前増殖網膜症 | 1~2か月に1回程度 |
増殖網膜症 | 2週間~1か月に1回程度 |
Q 糖尿病網膜症は治りますか?視力は元に戻りますか?
初期の段階である「単純網膜症」では、糖尿病自体の治療をすることにより眼の症状は改善されることがあります。しかし、「前増殖網膜症」や「増殖網膜症」における病変は不可逆的なものであり、進行すると完全に視力を回復することは難しくなります。進行した場合は光凝固療法や硝子体手術を行い、視力を一定程度改善したり、進行を抑える治療となります。したがって、糖尿病性網膜症は何よりも早期発見・早期治療が重要となります。
Q 硝子体手術はどのくらいの時間かかる手術なのでしょうか?また入院は必要でしょうか?費用はどれくらいでしょうか?
硝子体手術は重症度にもよりますが、手術時間は1~2時間程度となります。基本的には日帰り手術となりますので入院は不要ですが、合併症などがあり全身状態の管理が必要な場合は他の医療機関を紹介させていただいた上で入院となります。
費用については、次のとおりとなります。
1割負担(片眼) | 約35,000~60,000円 |
2割負担(片眼) | 約70,000~120,000円 |
3割負担(片眼) | 約100,000~180,000円 |
Q 光凝固療法にかかる費用はどれくらいでしょう?
約36,000~57,000円(片眼、3割負担)です。
Q 黄斑浮腫とは何ですか?
黄斑浮腫は単純網膜症から増殖網膜症まで、どの段階でも発症して視力低下につながる糖尿病網膜症の病変です。黄斑浮腫の原因は、内側血液網膜関門の破綻による網膜血管の透過性亢進で、腎機能障害がある患者さんや糖尿病網膜症が進行した患者さんでより多くみられるようになります。黄斑浮腫は糖尿病網膜症における視力低下の重要な原因となっています。
Q 黄斑浮腫に対する注射治療について教えてください。
眼の表面ではなく、眼球の中に直接薬剤を投与する治療です。眼に直接針を入れると考えると怖い気もしますが、基本的に安全性の高い治療となります。ステロイドやVEGF阻害薬を眼に直接注射することで、血管の新生や血管からの水分の漏出を防ぎ、浮腫を軽減する効果が期待できます。入院の必要はありませんが、注射翌日に感染や炎症の確認のため再度受診していただく必要があります。